yowoichi43’s diary

ちょっとした小説と、健康について

抜け落ちた風景 その5

  アナウンスで[次は◯◯城]  「降りるわよ」

平日にもかかわらず、花見客で城内は、思ったより

人出があった。

石段を登り、石垣の上にでると、

眼下は、ピンクの絨毯を敷き詰めたようだった、

思わず息を飲んだ、

「うぁー、綺麗ねぇ」と、彼女が

「ねぇ、あそこに座ろうか?」

「気持ちイイねー」

「こんなに、咲いてるとは 思わなかったわ」

もう一度  「キレイ」

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僕は君の方が綺麗だよ、なんて思いながら

彼女を 見ていた。すると、

「ね、どうしたの?」

「ん、何が?」

「ウウン、いい、」

彼女が、いつもの笑顔でこちらを見ていた。

「ねぇー」    「お腹が空いてない?」

「空いたー」

「お弁当、食べようか?」

「作ってきたの?」

「そ、ガンバったんだから〜」

蓋を開けると、卵焼き、唐揚げ、煮物など

弁当に所狭しと並べて入れてあり

「すごい」

「でしょー」

おかずを頬張り、おにぎりに手を伸ばしてた

「すごく、美味しい!」

「ホント!うれしい〜!」

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二人でいる楽しい時は、何故か、あっという間に

過ぎて行く、もっと一緒に居たいと 思うが

遅くなると、家に迷惑をかけるので、

「もう、帰ろうか?」

「うん、そうね、」

バスの、後部座席に座って

「私の方が、さきに降りるよ」と、彼女が言った。

「うん」

「あなた、降りる所はわかる?」

「うん、大丈夫、」

市内に向かって走る、バスは 空いていて やがて

見慣れた景色が見えてくる。

バス停の、アナウンスがされ、彼女が窓側の

ボタンを押そうと、僕のほうに寄って腕を

伸ばし押した。

ピーと鳴った時に、僕の耳元に唇を寄せ

小さな声で呟いた。

「好きよ、   耕ちゃん」

僕は、彼女の手をギュッと握りしめ、頷いた。

バスから降りて、見えなくなるまで

後ろを振り返ってた。

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