yowoichi43’s diary

ちょっとした小説と、健康について

抜け落ちた風景 その6

  翌朝

「おはよう!」「おはよう!」

彼女が、笑顔で挨拶を交わしながら  目で

[昨日のことはヒミツ]と、いたずらっぽく

微笑んだ。

仕事は、いつものように忙しく、雑用に追われ

慌ただしく、日々が過ぎて行った。

昼ごはんは、近くの喫茶店"ロマン"で済ませていたし

マスターも良くしてくれ、料理もなかなか充実して

何より美味しかった、

今日は、珍しく 定時で食事をしていると、

向かいのシートに、女性が立った、

「ここ、空いてますか?」

「あ、どうぞ!空いてますよ」

すると女性が、おもむろに「あのー」

「長澤さんですよねー」

「はぁ、はい!」

「総務の綾間です」「はぁ」

「綾間栞と、言います」

「ハイ?はじめまして、」

「あのー、覚えていらっしゃらないですか?」

「は?」

総務に知り合いは、いないし、ダレ?

「何日か前の、雨の時に  傘をお貸しいただいたのは

    覚えて、いらっしゃいますか?」

あ!そういえば、

「わかりましたか、その節はありがとう

    ございました」

何日か前、帰る時、急に雨になり、裏口に

女性が雨宿りをしていた、僕はたまたま、

傘を忘れて、会社に置いていたので「どうぞ」と、

差し出した、その時は 暗くてよくわからなかったし

顔も見ていなかった、

「いつも、ここでお昼を、済ませて、

    いらっしゃいますよね、」

「ハイ、ここのナポリタンは美味しいし、

    サービスで大盛りにしてもらえるものですから」

ウフフ、彼女は微笑みながら続けた

「総務とは、なかなか顔を 合わす事がないですね」

「そうですね〜、僕らは、時間が不定期ですから」

「もしよろしければ、この前のお礼を兼ねて

    お食事でもしませんか?」

「あ、ありがとうございます」

「じゃまた、ご連絡を差し上げますますわ」

そういいながら、席を立って行った。

その夜、バス停まで歩いていると、背後から

目隠しをされ、

「だーれだ!」

「慶乃!」

「正解!」

「どうしたのー、なんだか  暗いぞ〜」

昼の事を、話そうかと迷ったが、正直に

打ち明けた。

すると、慶乃は  アッサリと、

「ふ〜ん、行ったらいいんじゃない?」

「え!反対すると思ったよ」

「綾間さんて、総務の娘だよねー」

「行ってあげたら?」       「え?」

「大丈夫だよ、私!」

「あ!バス来た、じゃぁね〜」

「慶乃!」      「な〜に?」

僕は、声に出さず[好きだよ]   [私も]

バスの窓から、こちらに向かって、合図してくれた

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