yowoichi43’s diary

ちょっとした小説と、健康について

抜け落ちた風景 その7

  僕は、アパートに着いてからも、そのことを

考えていたが、

どうして、慶乃は  あんな事を、言ったのだろう

 

ある日、事務所に用があり、五階まで上がって行く

ここは、苦手だなぁ、お偉さんもいるし、

受付で、用件を済まし、エレベーターを待ってると

背後から「長澤さん」      「はい」

シー!口にゆびを当てて、綾間さんが、

「今晩、空いてますか?ロマンで待ってます」

業務室に帰り、難しい顔をしてると、

「耕太郎、どうした?事務所でなんか、

    やらかしたか?」宮崎さんが聞いてきた、

「いえ?なんでもないです」

「そうか、ならいいんだが、  検品がたまってるぞ」

「ハイ!」

帰りに、慶乃を探したけど、いなかったので

レジの別の担当者にきいたら、

「山田さん?たしか、今日は有休だったはず.

    何か、用ですか?」

いや、大した用ではないからと、その場を離れた、

その夜、ロマンに行くと、綾間さんが手を挙げて

呼んでくれた、

「すいません、遅くなりました。」

「よろしいですわ」

「マスター!コーヒーください。」

「あのー、こういう所を会社の人に、

    見つかっても、いいのですか?」

「ウフフ、わたくしは、大丈夫ですのよ、」

綾間さんが、改まって坐り直し、

「突然、こんな事を言うのは、おかしいとは

   お思いでしょうけど、どなたか、

   お付き合いされている方が、

   いらっしゃいますでしょうか?」

「ごめんなさい、このような質問を致しまして」

イエ、僕は生返事をした、慶乃と出かかったが、

「付き合ってるのは、秘密にしてよ」

慶乃から、念を押されてた、

「あのー、もし、よろしければ、わたくしと

   お付き合いをして、いただけないでしょうか?」

「うんん、お返事は、今すぐではなくても

    よろしいですから」

「すいません、わたくしの方から、呼び出して

   おいて、また今度、お返事聞かせてください」

そう言って、彼女は、帰って行った。

なんでも、門限が厳しいと言っていた、

去った後、カウンターに、席を移すと、

「耕ちゃんも、隅に置けないね〜」

マスターが聞いてきた、

「え?そんなことはないです、」

「今の娘を、知ってるの?」

「総務の、綾間さんですけど、」

「アレ、知らないの?耕ちゃんとこの、会社の

   社長の娘だよねー、」

「ウソ?ホント、ですかぁ」

「いいじゃん、付き合えば、将来は社長だぞー」

「イャァ、はぁ〜」

「なに?なに?浮かない顔だね〜

    他に、だれかいるのかなぁ」

僕は、浮かない表情で帰って行った、

アパートの近くに来た時、「え!」

階段の下に、人影が見えた、

「え!    あ!」

「慶乃!」

「ごめんね!待っていたの!」

「どうしたの?」

大きく頭を振り、下を向いていた、

初めて、その  細い肩を抱き寄せると、

少し震えながら、泣いていた。

「私、すごく、心配で」   「慶乃!」

初めて、唇を交わした。

慶乃のは頬を濡らしながら、細い声で

「好きだよ、耕太郎、耕ちゃん」

僕は、この時  自分が情けなくて、

泣きたい気持ちで、

「ね!今夜は、遅いからタクシーで送るよ、」

頷く彼女の、手を握りながら、家まで送り届け、

そのまま、アパートに帰ってきた、

部屋に入ると、涙が止まらなかった。

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