抜け落ちた風景 その8
もう街は、クリスマス前で 賑わいを見せている、
仕事も、多忙を極めていた、アパートには
ただ寝に帰るだけの、生活で仕事に追われていた。
あのことが、あってから慶乃は、いつものように
優しく、笑顔で接してくれた。
ある日、内線電話が鳴ったので、取ると
「ねー、今度の休みに、買い物に行こう」と、
慶乃が言ってたので、
「いいよ」 「ほんと?行こう」
二人揃って、デパートに出掛けるのは久しぶりで、
中は結構な、混み具合で、中々 目的の所へは
たどり着けないでいた、
慶乃が僕の手を引いて、紳士売り場に、連れて
行った。
色々なマフラーを、僕の首に掛けながら、
「耕ちゃんには、どれがいいかなぁ」と、
あれでも無い、この色でも無いと、探しては
首に掛けていた、
僕はというと、ただ何にも言わず、立っていたが
一緒にいるだけで、嬉しかったので、ニコニコ
していた。
少し離れた、ところに栞が母親と、ネクタイを
選んでいる。、
「お父様には、どれがいいかなぁ?」
「お母様も選んで!」
「栞が、選んであげて、お父様が
お喜びになるから」
栞が、なにげに 目を移すと、離れた所に
耕太郎と慶乃の姿が、目に止まった、
「長澤さん?」
「アラ、栞 だれかお知り合いでも?」
「イエ、お母様、人違いですわ」