yowoichi43’s diary

ちょっとした小説と、健康について

抜け落ちた風景 その10

  僕は、仕事に忙殺されて、慶乃にも、中々会えず

にいたが、ある夜に帰り道で、偶然に会った。

「元気!、どうしたの?最近なんだか、

    避けてるみたいな気がするけど、」

「なんか、あったの?」と、僕は声を掛けたら、

「最近、疲れちゃって!」

「大丈夫?」

「それに、こうやって周りの目を、気にして

    会うのも、どうかな?って、思ったりしてね」

「え?!」

「一度ね、私達の関係を白紙に戻さない?」

「何?どうしたの?」

「だからね、今のこういう状況が、嫌だって

    言ってるの、それに、あなたも、何も

     言ってくれないし」

「なんだかねー」

「え!何、言ってるの」

「あなたの、そういう所というか、煮え切らない

    所が、嫌なわけ!わかる!」

「だからね、もう会わない事にしたの!」

「ちょっと!待って!」

「サヨナラ、」そう言うと、バスに後ろも、

振り向かずに、乗って行った。

僕は、先程から降り出した雨の中、呆然と

バス停で立ち尽くしていた。

バスに乗った、彼女は、

目に涙を一杯に溜め、口を一文字に閉じ、

前を、真っ直ぐ見ていた。

僕は、アパートまでの道を、雨に濡れながら、

ボロ切れのように、重い足取りで帰った。

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それからは、僕は、ただ慶乃を、遠くから

目で追いかけていた。

彼女が見えると、切なくて苦しかった。

宮崎さんが「耕太郎、どうしたんだ?

                      お前、少し変だぞ、」

「いえ、大丈夫です、」

「しっかりしろよー、時期社長になるんだから」

「え?何処からそれを?」

「ロマンのマスターが、言ってたぞ」

「いい話じゃないか、もっと喜べよ、」

その時、慶乃が部屋に入ってきた、

「返品でーす、」

「は  い」商品を貰う時、指輪先が少し触れた、

僕は、思わず抱きしめたくなったが、

下を向き、涙を堪え、小さな声で

「わかりました」

宮崎さんが、「ごめんね、コイツ、この間から、

   ずっとこの調子でね、返品、やっとくね。」

部屋から出て行った後も、後ろ姿を、目でずっと

追い掛けてた。

その時、内線電話が鳴り、

「あ、はい、耕太郎?居ますよ、ちょっと待って」

「耕太郎、総務から電話だ、」

[すいません、お仕事中に お会い出来ますでしょうか

   ロマンでお待ちしております]

ちょっと出ますと、言って  ロマンに向かっていくと

栞が奥の方で、待っていた。

コーヒーが来てから、おもむろに、

「すいません、この間の、お返事いただけますか?

僕は、少しの間下を向いて黙っていると、

「実は、黙っていようと、思ったのですけれど

    この前、山田さんと、お話をさせて、

    いただきました、」

「え?」

「山田さんが、歳も離れているし、弟みたいな

    関係だと、おっしゃってました、でも、

    違うみたいですね、」

「前に、デパートでお二人をお見受けした時も、

    なんだか幸せそうに、してらっしゃるみたいで、

    それに、お店では長澤さんは、山田さんを

    ずっと、目で追いかけていらっしゃいましたし」

「…私は…私が、あなたの、心に入る余地は

    残念ながら、無いみたいですね、」

栞が、涙を堪えながら、一気に言った。

僕はその時、慶乃との思い出が、一杯に広がり

泣きそうになりながら、顔をくしゃくしゃにして、

席を立ち、後退りしながら、深く礼をして、

ロマンを飛び出して行った。

会社で「宮崎さん!自転車、借ります!」

「おう!いいよ!どうした?」

僕は、精一杯ペダルを漕ぎ、慶乃の家に向かった。

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