yowoichi43’s diary

ちょっとした小説と、健康について

抜け落ちた風景 その8

    もう街は、クリスマス前で 賑わいを見せている、

仕事も、多忙を極めていた、アパートには

ただ寝に帰るだけの、生活で仕事に追われていた。

あのことが、あってから慶乃は、いつものように

優しく、笑顔で接してくれた。

ある日、内線電話が鳴ったので、取ると

「ねー、今度の休みに、買い物に行こう」と、

慶乃が言ってたので、

「いいよ」   「ほんと?行こう」

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二人揃って、デパートに出掛けるのは久しぶりで、

中は結構な、混み具合で、中々  目的の所へは

たどり着けないでいた、

慶乃が僕の手を引いて、紳士売り場に、連れて

行った。

色々なマフラーを、僕の首に掛けながら、

「耕ちゃんには、どれがいいかなぁ」と、

あれでも無い、この色でも無いと、探しては

首に掛けていた、

僕はというと、ただ何にも言わず、立っていたが

一緒にいるだけで、嬉しかったので、ニコニコ

していた。

 

少し離れた、ところに栞が母親と、ネクタイを

選んでいる。、

「お父様には、どれがいいかなぁ?」

「お母様も選んで!」

「栞が、選んであげて、お父様が

    お喜びになるから」

栞が、なにげに 目を移すと、離れた所に

耕太郎と慶乃の姿が、目に止まった、

「長澤さん?」

「アラ、栞 だれかお知り合いでも?」

「イエ、お母様、人違いですわ」

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抜け落ちた風景 その7

  僕は、アパートに着いてからも、そのことを

考えていたが、

どうして、慶乃は  あんな事を、言ったのだろう

 

ある日、事務所に用があり、五階まで上がって行く

ここは、苦手だなぁ、お偉さんもいるし、

受付で、用件を済まし、エレベーターを待ってると

背後から「長澤さん」      「はい」

シー!口にゆびを当てて、綾間さんが、

「今晩、空いてますか?ロマンで待ってます」

業務室に帰り、難しい顔をしてると、

「耕太郎、どうした?事務所でなんか、

    やらかしたか?」宮崎さんが聞いてきた、

「いえ?なんでもないです」

「そうか、ならいいんだが、  検品がたまってるぞ」

「ハイ!」

帰りに、慶乃を探したけど、いなかったので

レジの別の担当者にきいたら、

「山田さん?たしか、今日は有休だったはず.

    何か、用ですか?」

いや、大した用ではないからと、その場を離れた、

その夜、ロマンに行くと、綾間さんが手を挙げて

呼んでくれた、

「すいません、遅くなりました。」

「よろしいですわ」

「マスター!コーヒーください。」

「あのー、こういう所を会社の人に、

    見つかっても、いいのですか?」

「ウフフ、わたくしは、大丈夫ですのよ、」

綾間さんが、改まって坐り直し、

「突然、こんな事を言うのは、おかしいとは

   お思いでしょうけど、どなたか、

   お付き合いされている方が、

   いらっしゃいますでしょうか?」

「ごめんなさい、このような質問を致しまして」

イエ、僕は生返事をした、慶乃と出かかったが、

「付き合ってるのは、秘密にしてよ」

慶乃から、念を押されてた、

「あのー、もし、よろしければ、わたくしと

   お付き合いをして、いただけないでしょうか?」

「うんん、お返事は、今すぐではなくても

    よろしいですから」

「すいません、わたくしの方から、呼び出して

   おいて、また今度、お返事聞かせてください」

そう言って、彼女は、帰って行った。

なんでも、門限が厳しいと言っていた、

去った後、カウンターに、席を移すと、

「耕ちゃんも、隅に置けないね〜」

マスターが聞いてきた、

「え?そんなことはないです、」

「今の娘を、知ってるの?」

「総務の、綾間さんですけど、」

「アレ、知らないの?耕ちゃんとこの、会社の

   社長の娘だよねー、」

「ウソ?ホント、ですかぁ」

「いいじゃん、付き合えば、将来は社長だぞー」

「イャァ、はぁ〜」

「なに?なに?浮かない顔だね〜

    他に、だれかいるのかなぁ」

僕は、浮かない表情で帰って行った、

アパートの近くに来た時、「え!」

階段の下に、人影が見えた、

「え!    あ!」

「慶乃!」

「ごめんね!待っていたの!」

「どうしたの?」

大きく頭を振り、下を向いていた、

初めて、その  細い肩を抱き寄せると、

少し震えながら、泣いていた。

「私、すごく、心配で」   「慶乃!」

初めて、唇を交わした。

慶乃のは頬を濡らしながら、細い声で

「好きだよ、耕太郎、耕ちゃん」

僕は、この時  自分が情けなくて、

泣きたい気持ちで、

「ね!今夜は、遅いからタクシーで送るよ、」

頷く彼女の、手を握りながら、家まで送り届け、

そのまま、アパートに帰ってきた、

部屋に入ると、涙が止まらなかった。

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抜け落ちた風景 その6

  翌朝

「おはよう!」「おはよう!」

彼女が、笑顔で挨拶を交わしながら  目で

[昨日のことはヒミツ]と、いたずらっぽく

微笑んだ。

仕事は、いつものように忙しく、雑用に追われ

慌ただしく、日々が過ぎて行った。

昼ごはんは、近くの喫茶店"ロマン"で済ませていたし

マスターも良くしてくれ、料理もなかなか充実して

何より美味しかった、

今日は、珍しく 定時で食事をしていると、

向かいのシートに、女性が立った、

「ここ、空いてますか?」

「あ、どうぞ!空いてますよ」

すると女性が、おもむろに「あのー」

「長澤さんですよねー」

「はぁ、はい!」

「総務の綾間です」「はぁ」

「綾間栞と、言います」

「ハイ?はじめまして、」

「あのー、覚えていらっしゃらないですか?」

「は?」

総務に知り合いは、いないし、ダレ?

「何日か前の、雨の時に  傘をお貸しいただいたのは

    覚えて、いらっしゃいますか?」

あ!そういえば、

「わかりましたか、その節はありがとう

    ございました」

何日か前、帰る時、急に雨になり、裏口に

女性が雨宿りをしていた、僕はたまたま、

傘を忘れて、会社に置いていたので「どうぞ」と、

差し出した、その時は 暗くてよくわからなかったし

顔も見ていなかった、

「いつも、ここでお昼を、済ませて、

    いらっしゃいますよね、」

「ハイ、ここのナポリタンは美味しいし、

    サービスで大盛りにしてもらえるものですから」

ウフフ、彼女は微笑みながら続けた

「総務とは、なかなか顔を 合わす事がないですね」

「そうですね〜、僕らは、時間が不定期ですから」

「もしよろしければ、この前のお礼を兼ねて

    お食事でもしませんか?」

「あ、ありがとうございます」

「じゃまた、ご連絡を差し上げますますわ」

そういいながら、席を立って行った。

その夜、バス停まで歩いていると、背後から

目隠しをされ、

「だーれだ!」

「慶乃!」

「正解!」

「どうしたのー、なんだか  暗いぞ〜」

昼の事を、話そうかと迷ったが、正直に

打ち明けた。

すると、慶乃は  アッサリと、

「ふ〜ん、行ったらいいんじゃない?」

「え!反対すると思ったよ」

「綾間さんて、総務の娘だよねー」

「行ってあげたら?」       「え?」

「大丈夫だよ、私!」

「あ!バス来た、じゃぁね〜」

「慶乃!」      「な〜に?」

僕は、声に出さず[好きだよ]   [私も]

バスの窓から、こちらに向かって、合図してくれた

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よろしければ、感想、ご指導をお願いしてください

 

 

抜け落ちた風景 その5

  アナウンスで[次は◯◯城]  「降りるわよ」

平日にもかかわらず、花見客で城内は、思ったより

人出があった。

石段を登り、石垣の上にでると、

眼下は、ピンクの絨毯を敷き詰めたようだった、

思わず息を飲んだ、

「うぁー、綺麗ねぇ」と、彼女が

「ねぇ、あそこに座ろうか?」

「気持ちイイねー」

「こんなに、咲いてるとは 思わなかったわ」

もう一度  「キレイ」

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僕は君の方が綺麗だよ、なんて思いながら

彼女を 見ていた。すると、

「ね、どうしたの?」

「ん、何が?」

「ウウン、いい、」

彼女が、いつもの笑顔でこちらを見ていた。

「ねぇー」    「お腹が空いてない?」

「空いたー」

「お弁当、食べようか?」

「作ってきたの?」

「そ、ガンバったんだから〜」

蓋を開けると、卵焼き、唐揚げ、煮物など

弁当に所狭しと並べて入れてあり

「すごい」

「でしょー」

おかずを頬張り、おにぎりに手を伸ばしてた

「すごく、美味しい!」

「ホント!うれしい〜!」

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二人でいる楽しい時は、何故か、あっという間に

過ぎて行く、もっと一緒に居たいと 思うが

遅くなると、家に迷惑をかけるので、

「もう、帰ろうか?」

「うん、そうね、」

バスの、後部座席に座って

「私の方が、さきに降りるよ」と、彼女が言った。

「うん」

「あなた、降りる所はわかる?」

「うん、大丈夫、」

市内に向かって走る、バスは 空いていて やがて

見慣れた景色が見えてくる。

バス停の、アナウンスがされ、彼女が窓側の

ボタンを押そうと、僕のほうに寄って腕を

伸ばし押した。

ピーと鳴った時に、僕の耳元に唇を寄せ

小さな声で呟いた。

「好きよ、   耕ちゃん」

僕は、彼女の手をギュッと握りしめ、頷いた。

バスから降りて、見えなくなるまで

後ろを振り返ってた。

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抜け落ちた風景 その4

  数ヶ月が過ぎようとしていた。

ある日、彼女が

「長澤くん、今度のお休み

   何か用事でもあるの?」

「いえ、部屋の掃除をするくらいで、 

    何もないです」

「そ、じゃ   ちょっと付き合ってくれる?」

「ハイ、」

「朝、迎えに行くね〜」

やったぜ!明日はデートだ!嬉しくて

自然と顔がにやけてきた、宮崎さんが

「どうした?耕太郎、顔の締まりがないぞ」

「い . え、なんでもないです」

翌朝、僕は早々と起き、彼女を待った。

          「おはよう」

窓下から、元気な声が聞こえた、窓を開け

            「おはようございます!」

「あ、今  下に降りて来ます」

慌てて、降りてくと、薄いブルー花柄の

ワンピース姿の彼女、

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制服姿を見慣れてるせいか、少し眩しく思えた、

「どうしたの?」

「イエ、朝日が眩しいなと思って、」

彼女は、ふーんみたいな顔をしていたが

「ね!今ね、お城の桜が綺麗だから

    みに行こうよ!いいでしょう?」

ハイ!

バス停まで、話しながら歩いていたら、

途中、急に  彼女がクルッと振り返り、

「ねぇ、その敬語はやめない?」

「なんだか、おしゃべりしにくいなぁ」

「ハイ、」       「ほら、またぁ」

「うん、」       「よろしい!」

笑いながら答えてくれた、

「ねぇ、バスきたよー」

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抜け落ちた風景 その3

もう 料理が並んでいて

6〜7人ほど、もう席に座り、話に花が咲いていた

「すいません、遅くなりました」

奥の方で、宮崎さんが手を挙げ、

「おう、待ってたよ」

「こっちに、座って」

「かたいことは抜きにして、まずは 乾杯しようか」

「じゃ、長澤くんようこそ!カンパーイ!」

"カンパーイ‼︎"

グラスの音がして始まった。

僕の右隣に、座っていた女性がビールを、

すすめてくれる、

「どうぞ」

「すいません、ありがとうございます」

この時初めて、慶乃(よしの)に、出会った。

涼しげな目元で、肩より少し長めの髪は

ゆるいウエーブがかかり、ニコッと微笑んで、

ビールを手にしてた。

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(あくまでも参考写真です)

僕は見た瞬間に、雷に打たれたような 、

ショックを受けた思いがして、

周りの景色が色あせて見えた。

「どうしたのですか?顔が赤いですよ」

グラスに注いでもらいながら

「ありがとうございます、あまりお酒は

強くないものですから」

彼女が「そうですか?ところで、此方は  初めて?」

「あ  ハイ、初めての土地で、わからない事ばかり

     です。」

口が  カラカラに乾くのがわかった。

「じゃぁ、私が、色々案内してあげますね、」

「私、1階レジ担当の  山田慶乃といいます、

   よろしくね」

これから先の会話は、何を言ったか覚えて

いないくらい、舞い上がっていた。

それからは、彼女が何とか、気に掛けて、

色々と手助けを、してくれたお陰で、

徐々にではあるが、スタッフ、街にも

溶け込んでいけた。

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お読みいただき、ありがとうございます、                よろしければ

ご指導をお願いします。

抜け落ちた風景 その2

  朝礼の時間、皆の前に出て、挨拶をすることとなり

始め店長が、今月の目標とか、言っていた

最後に紹介をされた、

「えー、今度、◯◯支店から この本店の業務担当

になった、長澤耕太郎くんだ、

よろしく頼むな!長澤くん、一言  どうぞ」

フロアーには、全スタッフの方々が 整列している

何でも月初めは 全員出席だそうで、

ざっとみても40〜50人近く、

こちらを  向いていた、

[うぁー、苦手だなぁ]

僕は正面に進み出て

「今度、本店、業務に配属になりました

     長澤です、よろしくお願いします」

皆から、拍手を貰い  開店の準備が始まった

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僕は、裏手で  色々な指示を上司の"宮崎さん"

からうけながら   仕事をこなしていくが

しかし、支店と違い  めがまわるような

忙しさであった。

夕方、落ち着いて来た時に、宮崎さんが

「長澤くん、今晩 何か用がある?」

「いえ  何もないですけど」

「いやね、ちょっとした君の   歓迎会を

    しようかと思ってね、スタッフに声かけたら

    「いいよ」という話になってね、

      急だったから、全員とはいかないが  いいよね」

「ありがとうございます」

近くの居酒屋に、行くと二階に案内された。

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もし、お読みになって  気になる部分がありましたら

ご指導をお願いします。