yowoichi43’s diary

ちょっとした小説と、健康について

抜け落ちた風景 その12

   僕は、出勤して慶乃と一緒に、店長と宮崎さんに

挨拶に行くと、

「おい、本当か、おめでとう」と、口々に言って

宮崎さんが、

「びっくりしたな、まさか山田くんと、

    付き合っているとはな、式の日取りは?」

「まだですけど、今度、実家に帰るので、

    ある程度決めたいと思ってます。」

「そうか!良かったな〜」

宮崎さんは、目を細めながら頷いて言った。

 

僕は、慶乃を連れて、実家の◯◯に電車で向かった

途中、電車の中では、慶乃が心配そうに何度も、

「大丈夫かなぁ」と、つぶやいた。

駅に、着いた途端「帰りたくなっちゃた」と、

半べそをかいていた。

タクシーで向かう車内では、

「ねぇ、私の服装は、おかしくない?」

「大丈夫だよ」手を、握り言うと、

「あー、ドキドキするなぁ」

しばらくして、実家のお店の前に、タクシーを

止めて、僕が先に降り、入っていった。

「ただいま!」

店の奥から、「耕ちゃん?」

母の声がして「おかえり、」と、エプロンで

手を拭きながら、顔を出した。

「あら、こちらが慶乃さん?」

「はい、初めまして、山田慶乃と言います。」

「よろしく、お願いします。」と、

深く、礼をしながら言った。

「まぁ、まぁ、遠いところ、大変だったでしょう?

   お父さんも、もう、配達から帰る頃だからね」

「耕ちゃん、奥に案内してあげて、」

しばらくして「いま、帰ったよー」父の、

声がし、商品を降ろす音が聞こえてきた。

「もう、慶乃さん、いらしてるよ、」

「そうか、お店早仕舞いしようか?」

「そうね、じゃあ  片付けるね、」

親父が、前掛けを外しながら、奥へ入って来た。

「いらっしゃい。疲れたろ、ゆっくりしてね」

「はい、ありがとうございます」

少しして、お袋が台所の方から、

お茶を持って、テーブルの上に置いて、畳の上に、

正座して両手をつきながら、挨拶をするので

慶乃も同じ様にした。

お茶を注ぎながら、「さ、飲んでよ」

そして、慶乃に微笑みながら、

「でも、良かったわぁ、こんなにしっかりした

    娘さんがきてくれるなんてねぇ。」

「ねぇ、お父さん?」

あぁと、親父が返事をした。

「お父さんとね、耕太郎には、年上のお嫁さんが、

    来るといいねぇ、と言っていたのよ」

「こんな可愛い人を、連れてくるなんてねぇ」

「ほんと、嬉しいわ!」

慶乃は恐縮していた。

「耕太郎は、少し頼りないところがあるから、

    慶乃さん、頼むわね!」

彼女がコクリと頷くと、お袋が、

「さ!食事の用意をしようかな」と、言いつつ

立ち上がり「由紀!手伝って!」

奥の方から「は〜い!」と返事があった。

慶乃は「私も手伝います」と、バックから、

エプロンを準備した、それを見ていたお袋が

関心という顔をして、

「由紀も、ちゃんと見習いなさいよ」言いながら

女三人で、台所で楽しそうに、お喋りをしながら

夕食の準備を進めていた。

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