yowoichi43’s diary

ちょっとした小説と、健康について

抜け落ちた風景 その13

   お風呂から出ると、夕食の支度が済んでいた。

親父が少しして、風呂から上がり、席につくと、

ビールを、由紀から注いでもらい、皆が座ったのを

見て、僕は改めて言った。

「山田慶乃さん!」

「山田慶乃です、よろしくお願いします。」

「手伝ってもらって、ごめんね、」

「いえ、そんな事はないです。」

親父が、じゃ、乾杯!と、珍しく音頭を取った。

そして「耕太郎を、よろしく頼むね、」と言い

「ほんとうに、慶乃さん、耕太郎を頼むわね!」

お袋が頭を下げて言ったら「お母さん」

お袋が涙を見せると、慶乃も感激して、

大粒の涙を流した。

「もう、お母さん!湿っぽくなる」由紀が言って

慶乃に向かって、

「ね!おねぇさんと、呼んでいい?」

「イイわよ」

「ホント!嬉しい!」

「私ね、おねぇさんが出来るのが、夢だったんだ」

万歳をして、喜んでた。

「ねぇ、今晩、ウチの部屋で寝ようよー」

「お母さん!いい?」

「慶乃さんは、長旅で疲れてるから、ダメよ」

「私なら、大丈夫です。」

「ね!お母さん!いいでしょう?」

「慶乃さん、いいの?」

「ハイ、由紀ちゃん、一緒に寝ようか?」

やったー!由紀が小躍りして喜んでいた。

「ところで、耕太郎、式はいつを考えているんだ?」

「ん?二人で話して、来年の春くらいにしようかな

    と、思ってる」

「慶乃さんの、方の都合はいいと?」

「ハイ、私は構いません、」

「そう、おい、母さん!慶乃さんところに、挨拶に

    行かないかんね」

「そうね、早めがいいわね〜」

親父が立ち上がり

「ちょっと、タバコ吸ってくるわ」

縁側に出て行った、お袋はビールを少しだけ飲み

ながら、

「お父さんねぇ、そりゃもう大変だったのよ、

    ソワソワしてね、何時頃、着くだろうか?とか

    慶乃さんに、なんて挨拶しようかとかね、

    ねぇ、由紀、うるさかったのよねぇ」

「本当だよ〜」

慶乃が、ハンカチを目に当てた、

「あら、ごめんね、泣かしちゃった?」

頭を、振りながら、慶乃が

「わたし…私、本当に幸せです」

お袋は、うん、うん、と頷いて

「ホント!よかった」と、言っていた、

そして、「さぁ、片付けようか?手伝って!」

「ハイ!」     「はーい」

 

翌日、「いつでもいいから、おいでね〜、

               耕太郎抜きでもいからね」

由紀は、学校があり、もう居なかったが、

「おねぇちゃん、また来てよ、約束だよ!」

そう言い残し、出て行った。

「お父さん!もう行くって」

「あぁ、また、来てね!待ってるからね、

    ご両親にも、よろしく言っといて下さい、

    また、日を改めて伺いますからね。」

「ハイ、ありがとうございました、

   伝えておきます。」

タクシーの中で、頭を僕の肩に乗せて、

「本当に、いいご両親、耕太郎が

    優しいのが、よく分かる気がするわ」

会社に出勤してから、店長と宮崎さんに

「春に決まりました」報告すると、二人供

そうか、よかったね〜と喜んでくれた。

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